<2021年決定版④>アメリカビジネスの今とこれから

目次

  1.  現在のアメリカの小売業界

  2.  2021年のホリデーシーズン

  3.  2022年の日本企業の展望

  4.  これから、日本企業がすべきこと


 1. 現在のアメリカの小売業界

 一日の感染者数は数万人を超えていますが、ワクチン接種が進み、アメリカではほとんどのシーンで人々は日常を取り戻しています。マスク着用は病院や学校、公共交通機関などでのみ義務付けられ、小売、飲食、観光を中心としたサービス業は活気を取り戻しています。

 

 そんなアメリカの小売業界において、現在最も深刻な問題は、コロナによる物流の乱れと、急激な需要の高まりによる商品の供給不足です。

 特にコンテナ船がその影響をうけています。船便は以前は日本からLA港へは40ft コンテナで3000ドル程度だったものが今では25000ドルと10倍近い運賃の値上がりをしており、それでもなおコンテナ船や労働者不足でブッキング待ち、港での荷下ろし待ちで、モノが滞留している状況です。
特にこれまで多くのモノをコンテナで輸入していた中国製品が、アメリカの小売店の棚から少しずつすくなくなってきています。

こうした物流費、燃料・人件費の値上がりにより、食材や日用品における物価上昇も直接的に日常生活の中で実感してきています。仕入れ型の小売店での値上げはまだそれほど顕著ではないのですが、Amazon など直接販売型のプラットフォームでは価格の反映が顕著で、モノによっては先月よりも20%以上値上がりしているものもあります。

バイデン政権は深刻な物流の混乱、物不足を解決するため、滞留が深刻なLA 港を24時間稼働させると発表。

経済復興が本格化した3月以降、急激なインフレ率を記録している。https://www.statista.com/statistics/273418/unadjusted-monthly-inflation-rate-in-the-us/ 

 

2. 2021年のホリデーシーズン

 こうした中で今年の卸業界におけるホリデーシーズンは、少し例年とは違った動きを、私たちの日々の営業活動の中で実感しています。通常大手の小売バイヤーはその年のホリデーの買い付けは年初、遅くとも6月ごろまでには終わらせる場合がほとんどですが、今年は全く違いました。仕入れ先からの突然のキャンセルや、ホリデー需要の高まりを期待した大手バイヤーからの、ホリデー直前の買い付けが目立ちました。在庫ありったけを、場合によっては数百から数千個のオーダーを2週間後までに納品してほしい、というような各社モノの取り合いのような、今までだと考えられないようなオーダーがたくさんありました。急な依頼に対して、当然私たちも在庫不足に苦しんでいましたが、生産体制を急遽見直し、一部は航空便対応するなどでなんとか納品を実行しています。

 各コンサル会社などは、過去最高のホリデーシーズンの小売売上を見込むほど、今年のホリデーシーズンに向けた小売り各社の期待感は大きくなっています。

3. 2022年の日本企業の展望

 こうしたアメリカの状況は、供給側にとって苦しい点はありますが、来年以降日本企業にとっては大きなチャンスともいえます。その大きな理由の一つは、消費者は今後「値段が高くても、価値のあるものを消費したい」という傾向がより一層高まると想定されるからです。コロナ後、アメリカ人、とくにミレニアルズ・ジェネレーションZ世代のサステイナブル志向はより高まっており、適正に作られた品質の良いものに適正なお金を支払い、できるだけ長く使う・楽しむことに価値が置かれています。

 コストや物流のハンデは中国製品も日本製品も同じですが、決定的に違うのは、日本製品は品質と機能性が一般的に中国製よりも高く、そもそもの価格設定が高い分、価格上昇の相対的な影響を受けにくく、価格が高くなっても、品質がよいので比較的高い価格が受け入れられやすいといえます。
 消費者からの企業としての社会的価値への要請は厳しくなり、生活のデジタル化によるトレンド変化の速度は早まる一方ですが、こうしたマーケットの要請に柔軟に答えられる、技術・品質・機能性に裏打ちされた日本の商品に対する市場の期待は来年以降より一層高まると予想されます。

 

 

4. これから、日本企業がすべきこと

 綿密な市場調査に裏付けされた商品戦略、ブランディング・マーケティング戦略を徹底すること。これは今までも言われてきたことではありますが、今後より一層徹底した消費者、マーケット目線での戦略の組み立て、そして戦略の継続的実行が重要になります。
ターゲット消費者の求める品質、機能性、デザインを兼ね備えた商品開発を行い、ターゲットの心に響くブランディングを作りこみ、適切なマーケティング戦略を実行することで、アメリカ人の生活のあらゆるシーンで、日本の製品が広く使われる日は遠くはないのです。

Lily

BOUS 代表。中央大学卒業後、キャノンマーケティングジャパン入社後、BtoB デジタルマーケティングの販促に携わる。2014年に単身渡米。NYにて20年以上日本企業のアメリカ市場進出サポートを行うMira Design へ入社。その後7年間、ジェネラルマネージャーとして、市場調査、企画、デジタルマーケティング、メディアPR, 営業と包括的に日本企業の海外進出をサポート。2021年独立、Bous起業。

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