<2021年決定版②>アメリカおもちゃ業界トレンド

 

目次

  1.  2021年のアメリカのホリデーシーズンの状況

  2.  2021年アメリカの人気おもちゃのトレンド

  3.  人気のおもちゃ紹介

  4.  まとめ


 1. 2021年のアメリカのホリデーシーズンの状況

 アメリカの小売業界最大のシーズンである、ホリデーが間近に迫り、各小売店は2021年最後の買い付けを加速させています。アメリカには11月にThanksgiveing (感謝祭。日本でいうお正月のような一年でも重要な休日で、アメリカには珍しく連休になる企業が多い。)、12月のクリスマスとホリデーの二大イベントでプレゼントを贈りあう風習があり、この時期は小売業界が一年で最も盛り上がるといわれています。日本でも最近みかけるBlack Friday (11月の第4木曜日の翌日にあたる日のことである。小売店などで大規模な安売りが実施される。)もこの時期にあたります。

 今年はアメリカではパンデミック後の世界的な物流の混乱に加えて、アメリカ国内での需要の急速な回復による「モノ不足」が深刻化しつつあり、通常前の年には買い付けを終えているような大手のバイヤーも急遽新たな仕入れを探すというようなイレギュラーなオーダーも増えています。去年はパンデミックの影響で家族や友人同士が直接会うことができなかった分、今年のホリデーシーズンは例年になく重要になると予想されており、ギフト市場の盛り上がりに、商品供給・物流をどこまで正常化させることができるかが注目されています。


 2. 2021年アメリカの人気おもちゃのトレンド

 

 アメリカの2020年のおもちゃ市場は$32.6 billion(約3兆3200億円)と言われ、2019年から16%上昇しました。2020年はコロナで学校や公園など子供たちが遊ぶ場所が奪われ、多くの子供たちが自宅で過ごす時間が大幅に増えました。(2019年比でアメリカのおもちゃ市場は約16%成長)そうした背景から、多くの親は、子供の自宅時間をiPad やTVに頼るのではなく、できる限り教育的かつ、子供の成長に重要と思われるスキルを伸ばすようなおもちゃを探し求めるトレンドが生まれました。

 2021年もそうしたトレンドが続き、またそうした親の要望を反映させるおもちゃが次々と発売されました。2021年は$38.3 billion(約4兆円)と見込まれていて、年成長率は1.5%以上をキープし続けています。そんなアメリカのおもちゃ市場の2021年の注目アイテムとトレンドをご紹介します。

 
 今回ご紹介するおもちゃに関連するキーワードを、以下の4つに分類しました。

① オンライン接続型
コロナで外に出にくく、人やモノとの接触をできる限り避けるため、アメリカではあらゆる生活シーンでデジタル化が進み、生活の中のたくさんのものがいわゆるIoT ("Internet of Things"の略でモノのインターネット) 化しました。おもちゃ市場も例外ではなく、最先端のデジタルおもちゃが数多く発売されています。

② サステイナビリティ
以前のブログでもご紹介しましたが、アメリカではサステイナブル(持続可能)な社会の実現に向けた大きな社会的トレンドが起きています。おもちゃ業界も例外ではなく、素材や製法がサステイナブルなおもちゃや、梱包に多く使われているプラスチック素材を減らすなどの企業の取り組みが進み、社会問題に関心の高いミレニアル層の親世代にアピールする戦略をとっています。



③ Youtuber 関連

Ryan, Cocomelon, Diana, Blippi, Pinkfong (Baby Shark)など、TV や映画からのキャラクターコンテンツだけでなく、Youtube発の子供向けコンテンツに関連したおもちゃが市場を席捲しています。キャラクター関連グッズだけなく、Youtube ビデオの中で紹介されたアイテムが「バズ」り、子供たちに大人気のアイテムになりました。

アメリカ大手小売りチェーンTarget の2021年のおもちゃカタログ。多くのYoutuber 関連グッズが紹介されている。



 サブスクリプション(定期購読型)
アメリカではあらゆる業界でサブスクリプションサービスが定着してきました。おもちゃ業界でも、「定額で、定期的に、年齢や要望に合わせたカスタムされたおもちゃ」が届くということで、人気を集めています。

 


3. 人気のおもちゃ紹介


それではそれぞれ具体的な例をご紹介していきます。


① オンライン接続型

Osmo https://www.playosmo.com/en/
2013年にスタートしたタブレットアプリ連動型の教育系おもちゃです。タブレット機能を拡張し、基礎ツールを購入したうえで、低年齢層を対象とした Play-Based Learning(遊びベースのラーニングプログラム)、小学生以上を対象にした Curriculum-Based Learning(学校の基礎カリキュラムベースのラーニングプログラム)、人気キャラクターとのコラボ商品など幅広く展開しています。タブレットだけに依存せず、実際にペンやツールで手先を使うので、子供も楽しく、親もタブレットを長時間使わせる罪悪感が低いです。元々は自社サイトやAmazon だけで販売していましたが、最近ではTarget や、家電系のチェーンBest Buyの店頭にも並ぶようになりました。 


AI ベースのロボット MOXIE  https://embodied.com/
MOXIEはかわいらしい見た目をしたロボットです。コロナで多くの学校がリモートワークになり、子供が他人と直接コミュニケーションをとる機会が極端に減り、多くの親が、子供たちのソーシャルスキルの著しい低下、また孤立による精神的な悪影響を心配しています。

引用 https://www.luriechildrens.org/en/voices-of-child-health-in-chicago/youth-mental-health-in-chicago-during-the-covid-19-pandemic/
シカゴでは約半数の親が、パンデミックに起因するメンタルの健康面に関連して子供を病院に連れて行ったという統計。

日本と比較し、メンタルの健康とソーシャルスキルを重要視するアメリカではパンデミックに起因したこうした状況を、子供の健康を脅かすものとして深刻な問題になっています。
 MOXIE は子供のセラピストなどの専門家の監修のもと設計され、子供たちにとって親友や兄弟のような存在として、親には話さないことを相談したり、お絵かきや本読みを一緒にしたりできます。専用のアプリで、子供の性格や要望をカスタムし、また親がMOXIE と子供との関係性の構築の状況を確認できます。

手が動き、顔の部分が液晶になっていて表情が豊かで、子供が親近感をもつことができる。


② サステイナビリティ

Green Toys https://www.greentoys.com/
100%
リサイクル素材を利用したおもちゃを展開。素材から商品ができあがるまでをWebsiteや売り場、パッケージなどあらゆる消費者とのコミュニケーションの場で伝えることで、ブランドの理念を効果的に広げることに成功しています。Made in USA をうたうことで、アメリカのメジャー市場にも切り込んでいます。

Ecologic Memory Eating in season  https://www.adventerragames.com/shop/ecologic-memory-eating-in-season/ 
記憶型カードゲームとシンプルなおもちゃだが、内容が「季節の食材を知ることでヘルシーな食生活を」送ることを目的に、食育に根ざした内容になっていて、カードやパッケージもプラスチックは使わず、すべてリサイクル可能な紙でできています。サステイナビリティからは少しずれますが、ミレニアルズ世代が重要視する価値観を子供に伝えるための教育的おもちゃが人気です。


③ Youtube関連

Unboxing 型おもちゃ
多くの子供向けYoutuber が新しいおもちゃを一つずつ開けて紹介していく動画から、「何が入っているかわからないおもちゃを開ける」こと自体に楽しみを持たせたUnboxing 型のおもちゃが流行しています。開ける楽しみを最大化するため、卵型になっていたり、カプセルを何重にも包装したりと工夫されています。

大人気LOL Surprise のUnboxing 型のカプセル。中にキャラクターが入っている。Walmart で約$100で販売されている。

Pop-it 無限プチプチ型おもちゃ
こちらもYoutuber やTik Tok でのインフルエンサーが火付け役となり、2021年最もヒットしたおもちゃといえます。あらゆるデザインであらゆる場所で販売され、もはや持っていない子供のほうが少ないといえるかもしれません。手元を動かすことで、子供の発達や、精神を安定させるという意図もあり、爆発的に広まりました。

④ サブスクリプション(定期購読型)

Kiwico https://www.kiwico.com/
毎月決まったテーマでクラフトを楽しむことができるキットが送られてきます。毎月約25ドル程度から手軽にスタートでき、0歳から大人まで、9つの世代に分類され、また興味別に内容をカスタムすることができます。内容も年齢に合わせて、制作の難易度が良く設計されていて、出来上がったものもインスタ映えするデザインになっており、デジタルを活用したマーケティング戦略で人気と知名度を高めています。

literati Kids Book Club https://literati.com/kids/
おもちゃではないですが、子供向けの本のサブスクリプションサービスです。毎月約 $10の費用で、年齢と子供の興味を設定すると、5冊のキュレートされたお勧めの本と、子供の名前が入ったシールとテーマにあった小さなおもちゃが送られてきます。本に目を通して、気に入った本だけを抜き取り、残りの本は同梱された返品用の出荷ラベルを張り付けて送り返します。後日抜き取った本の分だけ、登録してあるクレジットカードに請求がくる仕組みになっています。
 いろいろな本を読んでほしいが何を選んだらいいのかわからない、読んでみないと子供が気に入るかわからない、といった絵本を購入する際の親のストレスを、シンプルな手順で解決してくれるサービスで私も個人的に活用し、大変気に入っています。

4. まとめ

いかがだったでしょうか?日本と共通したトレンド、そしてアメリカの文化に根差した独自のトレンドをご覧いただけたかと思います。 保守的と言われたアメリカのおもちゃ市場ですが、Youtuber やTik Tok の出現により、新たな商品が一躍ブームになる可能性を大きく秘めています。

今後アメリカのおもちゃ市場に展開を検討される場合は、

  • 子供の学術的、創造的、感性的なスキルの向上に役立つことができるかどうか

  • 特にサービス提供面および情報発信面において、デジタルフレンドリーであるかどうか

という二点に特に着目し、ブランディング、商品企画、マーケティング戦略を組み立てることがアメリカ市場における成功の近道となります。

 また、サステナビリティやヘルシー志向などミレニアルズの親世代が重要視する価値観を商品企画やマーケティングに取り入れることも大切なポイントといえるでしょう。

Lily

BOUS 代表。中央大学卒業後、キャノンマーケティングジャパン入社後、BtoB デジタルマーケティングの販促に携わる。2014年に単身渡米。NYにて20年以上日本企業のアメリカ市場進出サポートを行うMira Design へ入社。その後7年間、ジェネラルマネージャーとして、市場調査、企画、デジタルマーケティング、メディアPR, 営業と包括的に日本企業の海外進出をサポート。2021年独立、Bous起業。

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